「ASDなそら」管理人のそらです。
ASD(自閉スペクトラム症)当事者の視点で、
仕事や生活に役立つ情報を発信しています!
私はある日、YouTubeの「出版区チャンネル」で配信されている
「本ツイ」という企画動画を見ていました。
著名人が本を熱く語るこの企画の中で、
紹介されていたのが、
平野啓一郎さんの『私とは何か「個人」から「分人」へ』という一冊でした。
タイトルに惹かれて再生ボタンを押したその瞬間から、
私はまるで自分の心の中を代弁されているような感覚に襲われました。
- 「たったひとつの本当の自分なんてない」という考え方
- 関係ごとに異なる自分が、それぞれ「本物の自分」だという発想
これは、ASD(自閉スペクトラム症)の私にとって、
救いであり、解放でもありました。

本を実際に読み始めてからは、何度もうなずき、何度も立ち止まり、
気づけば涙があふれていたページもありました。
この記事では、その読書体験を通して感じたことを、
同じように自分らしさに悩む方、
メンタルの課題や人間関係に苦しむ方と分かち合いたいと思います。
「本当の自分はどれ?」という苦しみ
ASDの私は、
長い間「本当の自分ってなんだろう」と悩み続けてきました。
- 家族の前では『無口な私』
- 職場では、まわりから『頼りになるね』と言われることが多い『明るい私』
- ブログを書くときには『言葉が止まらない私』

どれかが「偽物」で、どれかが「本物」なのか。
それが分からないことが不安で、
自己肯定感を持てないまま過ごしてきました。
人との関係性によって態度や発言が変わる自分に、
「ブレている」「八方美人」なんじゃないかと
責めてしまうこともありました。でも、そうしないと生きづらかった。
だからこそ、平野さんのこの言葉に出会ったとき、
目からウロコが落ちるようでした。
たった1つの本当の自分など存在しない。
裏返して言うならば、
対人関係ごとに見せる複数の顔が、
全て本当の自分である
書籍より引用
この一文は、私にとって「許し」でした。
「どれかを選ばなくていいんだ」
「全部が自分でいいんだ」
そんなふうに、少しずつ心の重りがほどけていきました。

分人という「複数の自分」たち
平野さんは「分人主義」という独自の思想を展開しています。
簡単に言えば、
「人は一人の中に、関係性ごとに異なる「分人」を持っていて、
そのどれもが本当の自分である」という考え方です。
学校では無口でうまく話せない、
けどSNSでは活発に発信できる。
そのどちらの自分も本物。
無理に一貫性を持とうとしなくても、
私たちは“分人”の集まりとして生きていて良いのだと。
「私たちは、自分という人間を、
複数の分人の同時進行のプロジェクトのように考えるべきだ。
学校での分人がイヤになっても、
放課後の自分はうまくいっている。
それならば、その放課後の自分を足場にすべきだ」
書籍より引用
これはASDの私にとって、とてもありがたい視点でした。
私はマルチタスクが苦手で、急な予定変更や過剰な刺激に弱い。
でも、自分の好きなこと(読書やブログ)に向き合っているときは、
とても満たされた気持ちになります。
その「自分が好きだと思える分人」を大切にして、そこを軸に日々を整えていく。

そう思えるようになってからは
「嫌な場所でも頑張り続けなきゃ」と自分を追い詰めることが減りました。
むしろ「好きな自分を増やすためにエネルギーを使おう」と思えるようになりました。
「全部の自分を好きにならなくていい」という優しさ
「人は、なかなか、自分の全部が好きだとは言えない。
しかし、誰それというときの自分(分人)は好きだとは、
意外と言えるのではないのだろうか?
逆に、別の誰それといるときの自分は嫌いだとも。
そうして、もし、好きな分人が1つでも2つでもあれば、
そこを足場に生きていけばよい」
書籍より引用
この文章に出会ったとき、
胸がスッと軽くなるような感覚がありました。
私は、自分の全部を肯定できないことで
「こんな自分はダメだ」と思い続けてきました。
でも「まるごと好きにならなくてもいい」という視点は、
そんな私にとって初めての「救い」のように感じられたのです。
例えば、家族と接しているときは気分が落ち込み、
ストレスから頭痛が出てしまうことがあります。

しかし、休日にカフェでブログを書いているときの私は、
自分でも好きだと思える存在です。
だからこそ、その「ブログを書いている私」を足場にして
生活を整えていくことにしました。

そうすることで「嫌いな自分」ばかりに引きずられずに、
少しずつ前向きに過ごせるようになってきたのです。
この「分人を軸に生きる」という考え方は、「ASD」に限らず、
「HSP」や「うつ傾向」のある方、
「人間関係で悩んでいる」多くの人たちに響く視点だと感じます。
「社会に適応する」のではなく「自分に合う場を探す」
ASD当事者は、しばしば「社会に適応するための努力」を求められます。
でも、どうしても向いていない場面や人間関係があります。
それを「適応できない = 自己責任」とされることに、
私は長年苦しんできました。
しかし、平野さんの分人主義は、
そんな私にこう語りかけてくれるようでした。

(イメージ)
合わない場所で無理するのではなく
「合う分人」を生きる時間を増やせばいい
家族関係は常に不安定で、
毎日がどこか張りつめたような気持ちで過ぎていきます。
けれども、
- 会社で「誰かの役に立てている」とき
- カフェで「ブログと向き合っている」とき
- SNSで「自分の言葉を届けている」とき
- 水に身を任せて「泳いでいる」とき など
その時間の中の私は、落ち着いていて、
自分を肯定できる瞬間に出会えている気がします。
この「足場」を大切にして「嫌いな分人」を無理に変えようとしない。
その選択ができるようになったことで、
自分を責めすぎずにいられるようになりました。

『私とは何か』をおすすめしたい人
- ASD・HSP・ADHDなど、神経発達特性を持っている方
- うつ・不安障害などメンタルの課題を抱えている方
- 自己肯定感が低く「本当の自分」が分からなくなっている方
- 人間関係で消耗しやすい方
- 「社会に適応すること」に疲れてしまった方
読むことで、「自分のままでいい」と思える瞬間が、きっと訪れるはずです。
最後に:自分らしくあるということ
平野啓一郎さんの『私とは何か』は、
私にとって「生き方を問い直す」きっかけとなりました。
「自分とは何か」と問い続けるのは、
決して間違いではありません。
でも、その問いに疲れたとき、
「分人」という考え方を思い出してみてほしいです。
「どれもが本当の自分だ」と思えたとき、
人はもっと自由に、もっと楽に、そしてもっと優しく生きられるのだと思います。
ASDの私も、完璧じゃないけれど、
好きな分人を育てながら、今日を少しずつ前に進んでいます。
もし、あなたにも「好きな自分」がひとつでもあるのなら、それをどうか大切にしてください。
そして、あなたの「本当の自分」は、
きっと「いくつもある」ということを、どうか忘れないでください。
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