「ASDなそら」管理人のそらです。
ASD(自閉スペクトラム症)当事者の視点で、
仕事や生活に役立つ情報を発信しています!
「無理をしない」
この言葉、一見すると当たり前のことのように聞こえますが、
実際にはとても難しい課題です。
特に、自閉スペクトラム症(ASD)とともに生きる私たちにとって、
このテーマは深刻です。なぜなら、私たちの多くは
「疲れていることに気づかないまま動き続けてしまう」特性を持っているからです。
・気がついたら数時間も集中して作業をしていた
▶️ 突然電池が切れたように動けなくなる
・「あとちょっとで終わるから」と自分を追い込む
▶️ 終わった後には疲れ果ててベッドに直行。
・休むタイミングがわからず「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせる
▶️ 次の日まったく起きられなかった
私はまさに、これらの典型的なパターンを何度も繰り返してきました。
そんな体験があるからこそ、
「どうすれば無理をしないで生きられるのか?」というテーマに、
自然と関心が向くのです。
なぜ、無意識のうちに無理してしまうのか?
ASDの特性のひとつに「過集中(ハイパーフォーカス)」というものがあります。
すべてのASD当事者がこの特性を持っているわけではありませんが、
多くの人が経験している状態です。
過集中とは
目の前の作業に強く没頭してしまい、
自分の身体の状態や時間の経過に気づきにくくなる状態を指します。
これは「ゾーンに入る」とも言われます。
とても生産的なように見える反面、
休憩を忘れてしまう危険な状態でもあります。

気づいたら5時間以上パソコンに向かっていた、ということが何度もあります。
- トイレに行かない
- 水分補給もしない
終わった後には、頭痛が襲ってきて動けなくなります。
にもかかわらず、そのときは「無理している」という感覚がまったくありません。
ここが厄介なポイントです。
「無理している」という自覚がないから、ブレーキが効かない。
そして、気づいた時にはもう手遅れ、ということになるのです。

「無理をしない」ための5つの実践法
1. 疲労度カウンターを使って「今の自分」を数値化する
就労移行支援で紹介された方法の一つが、「疲労度カウンター」です。
やり方はシンプルで、
次のように10段階で自分の疲れを表すだけです。
- 0:元気100%!
- 3:少し疲れた、けど問題なし
- 5:まあまあ疲れた。作業はできるが注意力は下がっている
- 7:疲れが溜まってきた。休憩が必要
- 9:限界が近い。頭が回らない
- 10:もう無理。何もできない
この数値を、朝・昼・夕方など1日3回程度、
ノートやスマホにメモしてみてください。
特別なアプリは必要ありません。
大事なのは「自分がどれだけ疲れているか」に意識を向けることです。
詳しくは以下の記事をご覧ください⬇️
2. 一度「あえて」無理してみる
これは一歩間違うと危険な方法ですが、
あえて限界を知ることも時には必要です。
自分の「ここまでなら動ける」というボーダーラインが見えてくるからです。
- 翌日寝込むかもしれない
- 精神的なダメージを受けるかもしれない
万全の状態で、サポートを受けられる環境下で挑戦してください。
私自身、昔「これが限界か…」と感じた出来事があり、
それ以来「このラインを超えると危険」という感覚が身につきました。
そのおかげで、今では意識的に休憩を取ることができるようになっています。

3. 「心地よさ」のラインを見つける
無理をしない生活とは、我慢して何もしないことではありません。
「自分が一番心地よく活動できる範囲を見極め、それを守ること」
これが本質です。
そのためには、何度か「やりすぎ」を経験する必要もあります。
そしてその過程の中で「これくらいがちょうどいい」と思える範囲が見えてきます。
- 続けて作業するなら、2時間が限度
- 30分に1回はストレッチが必要
この基準が定まると、無理をしたときにも
「あ、これはやりすぎだな」と気づくことができます。
そして、そのタイミングで「やめる」という選択ができるようになります。

4. 体力をつけて、疲れにくい身体をつくる
ASD当事者は、感覚過敏やストレス耐性の低さから疲れやすい傾向があります。
そのため「無理しない」ためには、体力をつけることも大事な要素になります。
運動と聞くとハードルが高いかもしれませんが、
最初はウォーキングで十分です。
私も、はじめは家の近所を15分歩くだけでした。
慣れてくると、自然と距離も伸びていきました。
そして体力がつくと、精神的な安定にもつながります。

注意点は、運動でも「過集中」状態になりがちな点です。
「今日は調子がいい」と思って1時間走ったら、次の日動けなくなった…
そんな経験もあります。だからこそ、
「少し物足りない」くらいで終えることがコツです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください⬇️
5. 睡眠を最優先にする
忘れがちですが、睡眠はすべての土台です。
どれだけ工夫をしても、眠れていなければ回復できません。
ASD当事者は、入眠困難や中途覚醒など睡眠に課題を持つことが多いと言われています。
その場合は、専門医に相談するのも一つの手です。
- 「寝る30分前から」スマホを触らないようにする
- 部屋を暗くする
- リラックスする音楽を流すとよりよい
「眠るのも仕事」と割り切って、まずは睡眠を優先しましょう。
疲れが取れやすくなり、無理をしにくくなります。

「無理しない」ことは、我慢することではない
最後に、強調したいことがあります。
「無理しない」とは「何もしないこと」ではありません。
「自分のリズムや限界を知って、その範囲で最大限のパフォーマンスを出す」ことです。
これは決して逃げではありません。
むしろ、自分の人生を主導的に生きるための技術です。
明日から、いきなり無理しない自分に変わることはできません。
でも「今日は疲労度を記録してみる」「少しだけ早く寝てみる」
そんな小さな一歩から始めていけば、必ず変化が訪れます。

そして、もしあなたが「こんな工夫が役に立ったよ」という経験を持っているなら、
ぜひコメント欄などで教えてください。
他のASD当事者にとって大きなヒントになります。
「コツコツ、ぼちぼち」と1日を積み上げていきましょう。
無理をせず、でも前に進む。
それが私たちASD当事者の、しなやかな生き方なのです。
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