「ASDなそら」管理人のそらです。
ASD(自閉スペクトラム症)当事者の視点で、
仕事や生活に役立つ情報を発信しています!
発達障がい──特に自閉スペクトラム症(ASD)を持つ私たちは、
「過集中」という特性に日々向き合っています。
とても良い面もあります。
- 好きなことには圧倒的な集中力を発揮できる
- 短時間で驚くような成果を上げられる
けれど、その裏で、こんなリスクも抱えているのです。
- 疲労に気づかず限界を超えてしまう
- 時間を忘れ、周囲の変化に気づかない
- 視野が極端に狭くなり、小さな違和感を見落とす
これは、私自身が何度も体験してきた現実です。

そしてある時、私は過集中の怖さ以上に、
「注意書き」や「小さなサイン」を見逃す怖さを痛感する出来事に出会いました。
この記事では、就労移行支援を利用していた頃の実体験をもとに、
「過集中で見逃してしまうもの」と「それにどう向き合っていくか」について、
お話ししていきます。
作業中の出来事その1 Excel作業での「うっかりミス」
就労移行支援を受けていたある日、Excel課題に取り組んでいました。
内容は「問題用紙に書かれた仕様通りに、表とグラフを作成する」というもの。
普段からパソコン操作には自信があった私は、
テンポ良く作業を進め、早々に完成品を印刷しました。
そして職員さんに提出したところ。

何か、違いますよ?
指摘された瞬間、私は頭が真っ白に。

全部合ってるはずなんだけど…
そう思いながらも、完成品と問題用紙を見比べてみると…
明らかな違いがありました。
職員さんが優しく指を差して教えてくれました。

ここ、注意書きに細かく指示があったんですよ。
私はハッとしました。
問題文の「注意書き」を読み飛ばしていたのです。
作業スピードばかりに意識が向き、
「指示を丁寧に確認する」という基本を忘れていました。
このとき、職員さんが日報に書いてくれた一言、
注意書きはよく見よう!
これが今も私の心に深く残っています。
作業中の出来事その2 部品不足と「見落とし」
また別の日、今度はブロック(レゴのようなもの)を使った
組み立て課題に取り組みました。
ここでも私は、同じ失敗を繰り返しました。

説明書をパラパラと流し見し、すぐに作業に取りかかりました。
「スピードが大事だ!」という意識に支配されていたのです。
しかし。

あれ?部品が足りないぞ…?
途中で必要なパーツが見つからず、焦るばかり。
仕方なく一度崩して、最初からやり直しました。
ところが、再度組み立てを進めてもまた別のパーツが足りなくなる。
結局、何度もやり直し、かなりの時間を浪費した挙句、
部品が「実際にはちゃんと存在していた」ことに最後まで気づきませんでした。
原因は、最初に説明書をきちんと読んでいなかったこと。
「2度あることは3度ある」まさにそんな状況でした。
その日の私の日報には、こう記しました。
説明書見る!
これは単なる反省ではありません。
この時私は「自分にとってどんな行動が失敗を招きやすいのか」を、
初めて明確に意識できたのです。

苦手を把握するための「スリーストライク理論」
この一連の失敗を経て、自分なりのルールを作りました。
それが──
ミスは2回まで許す。3回目は苦手認定する。
いわゆる「スリーストライク制」です。
- 1度目の失敗はOK
- 誰でも最初はミスをする
- 2度目に同じ失敗をしたら「原因を必ず探る」
- 他人と話し合いながらするのがよい
- 自分自身で深堀りするのもGOOD
- 3度目でアウト。「苦手な行動・分野」として、しっかり認識する

苦手と認めることは、決して「諦める」という意味ではありません。
むしろ、苦手を把握することで、適切な対策や配慮を講じることができます。
ASD当事者にとって、この「得意と苦手を正しく言語化する力」は、
社会で生きるための武器になります。
面接・就職で活きる「苦手の言語化」
例えば就職活動の場面。
企業側は「この人は何ができるのか」だけでなく、
「この人はどんなサポートがあれば最大限力を発揮できるのか」も知りたがっています。
ここで、詳細に伝えられたらどうでしょうか。

私は過集中に陥ると、注意書きを見落としやすいです。
そのため、作業開始前に指示内容を
口頭で確認する時間をいただけると助かります。
採用担当者はきっと、あなたが「自己理解と自己管理ができる人だ」と
ポジティブに受け止めることでしょう。
苦手を伝えることは、弱みを晒すことではありません。
適切な配慮を得るための、大切な交渉行為です。
「次に同じことが起きたら、どうする?」
私の中学時代、ある数学教師が繰り返し言っていた言葉があります。
「次、同じような問題が出た時どうするか?」
このシンプルな問いかけは、今でも私の行動指針になっています。

単に「間違えた」で終わらせない。
必ず「次に似た状況に出会ったらどう対処するか」まで考える。
これが、成長するために最も重要な視点です。
私たちは何度でも間違えます。でも、
同じ間違いを「無意識に」繰り返すのは避けられる。
そしてその積み重ねこそが、「自信」と「スキル」になっていくのです。
コツコツ、ぼちぼち──それが私のスタイル
私は決して器用なタイプではありません。
一度にたくさんのタスクをこなすのも苦手ですし、
注意力が続かない日もたくさんあります。
けれど、そんな自分を責めることはしません。
- 小さな失敗を「成長の材料」に変えていくこと
- 苦手なことに「工夫」という名の武器を持たせること
- 何より「コツコツ、ぼちぼち」を続けること
これが、今の私にできる最善の生き方だと信じています。

おわりに 「失敗は恐れないこと」
発達障がいの特性は、決して「悪いもの」ではありません。
過集中も、正しく向き合えば、大きな武器になります。
失敗してもいい。
見逃してもいい。
ただし──次はもっと良くなる方法を探すこと。
これからも私は、失敗を恐れず、一歩ずつ前へ進んでいきます。
そしてあなたにも、こう伝えたいのです。
大丈夫、失敗しても、ちゃんと前に進める。
コツコツ、ぼちぼち、一緒に歩いていきましょう。
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