「ASDなそら」管理人のそらです。
ASD(自閉スペクトラム症)当事者の視点で、
仕事や生活に役立つ情報を発信しています!
就労移行支援の利用を終え、
私は企業での就労をスタートさせました。

日々、実際に職場で働くようになって見えてきたこと。
それは、こんな事実です。
「あの時、職員の方が繰り返し話していた『あの図』こそが本質だった」
その図とは?
これは、厚生労働省が公開している
「職業準備性ピラミッド」という資料です。

この図は、ピラミッドの形をしており、
下から順に以下の5段階に分かれています。
- 健康管理(体調・障がい理解・服薬など)
- 日常生活管理(生活リズム・金銭管理など)
- 対人スキル(挨拶・協調・感情コントロールなど)
- 基本的労働習慣(出勤・報連相・ルール遵守など)
- 職業適性(適職判断・スキル・専門性など)
私が本当に痛感しているのは、
ピラミッドの下が崩れると、上のどれだけ素晴らしいスキルも無意味になる
ということです。
就職してからも、この図を見返しては

(管理人)
健康管理、なかなか苦労したな…
そう、自分を振り返るときがあります。
この記事では、ピラミッドの“土台”である下3つ、
- 健康管理
- 日常生活管理
- 対人スキル
この3つについて、ASD当事者の視点から掘り下げていきます。
これは「とても地味」な話かもしれません。
でも、この3つが本当にできているかどうかで、
働き続けられるかどうかが決まると、私は断言できます。
※上の2つは就労移行・就労継続などで
時間の経過とともに鍛えられていきます。
そのため、この記事では割愛します。
1. 健康管理:「自分を知ること」がすべての始まり
ピラミッドの最下層にある「健康管理」
これが一番下にある理由はシンプルです。
これができていないと、何も始まらないから。
- 毎日決まった時間に起きて、決まった時間に寝る
- 自分の障がい特性(ASDなど)について、ある程度の理解がある
- 薬が処方されているなら、飲み忘れずに服薬できている
- 心身の体調変化に自分で気づき、休む・対処する力がある
これは「完璧であれ」という意味ではありません。
「自分なりの」体調管理の方法が確立しているかどうかが大事なのです。

自分の特性を知ることは「責任」でもある
ASDの特性は人によって本当にバラバラです。
- 刺激に敏感で疲れやすい
- 言葉のニュアンスが伝わりにくい
- こだわりが強くて柔軟に動けない
- 反対に、指示が曖昧すぎると不安で動けない
あなたは以下について、他人に言えるでしょうか?
- こういう時に疲れる
- こういう環境が合っている
職場は、残念ながら
「あなたが疲れないように自動で調整してくれる」場所ではありません。
だからこそ「自分で自分を理解しておくこと」が必須なのです。

それが「障がい者枠」であっても同じです。
障がいへの配慮は、「何が必要か」まで伝えられて初めて実現します。
経験が少ないことは、やってみることでしか埋まらない
ASD当事者は、多くの場合、
健常者よりも「人生経験の数」が少ないです。
その理由は…
過去にうまくいかなかった経験が多く、
「また失敗したらどうしよう」という気持ちが先に立つから、です。
でも、断言します。
「やったことがない」から「できない」と決めつけるのは損です
こんな経験が、人生を変えます。
- 苦手だと思っていたけど、やってみたら意外と得意だった
- 無理だと思っていたことが「助けてもらいながら」できた
2. 日常生活管理:働く前に、生活が回っていますか?
日常生活管理とは、
文字通り「日々の生活を自分で回せているかどうか」です。
- 早寝・早起きができているか
- 朝食をとっているか
- 生活リズムが乱れていないか
- お金を計画的に使えているか
- 収入に見合った生活が送れているか
「働きたい」なら、まず「起きる」ことから
これは実際に就労移行支援の現場でも言われることですが、
昼夜逆転の生活をしている人に仕事は任せられません。
アルバイトならまだしも、正社員として働くなら
「人と同じ時間帯に起きて動ける」が最低条件です。
そしてこれを支えるのが「自律」と「習慣」です。
- 夜ふかしをしないように、スマホの使用時間を制限する
- 朝ごはんの準備を、前日の夜に済ませておく
- 週末に生活が乱れないように、予定を立てておく
これらは、誰かがやってくれるわけではなく、自分でやるしかありません。
だからこそ「生活管理ができているかどうか」は、
その人の自立度を表す大切な指標です。

お金の管理も「社会人スキル」
就労継続支援や就労移行支援などを利用していた方にとって、
「お金の管理」は後回しになりがちです。
でも、就職すれば一気に現実になります。
- 家賃・光熱費・スマホ代
- 食費・交通費・交際費
- 貯金・突発的な支出(病院・冠婚葬祭)
収入の範囲内で計画的に使わなければ、
「働いているのに生活が苦しい」状態に陥ります。
- 家計簿アプリを使う
- 「マネーフォワード ME」がおすすめです
- 毎月の使い道を「封筒分け」で管理する
- 物理的に分けることで、無駄遣いを防止します
- 自動で貯金に回す設定を作る
- 現金受取(訓練費など)➡️ すぐに口座に入れてしまう
- 口座に振込(給料など)➡️ 一定額を別の口座に移す

3. 対人スキル:働くとは「人と動く」こと
ASD当事者にとって最もハードルが高いのが、ここかもしれません。
- 場面に合った言葉遣いができるか
- 挨拶が自然にできるか
- 感情的にならずに伝えられるか
- チームでの役割を理解できるか
- 「報・連・相」(報告・連絡・相談)ができるか
挨拶の力は侮れない
実際に、私が就職の面接で言われた言葉があります。

あなたの挨拶、気持ちいいですね
これは、スキルでも経験でもない、人としての「印象」です。
仕事は「人と人との信頼の上に成り立っている」ので、
最初の印象はとても大切です。
- 朝、職場ですれ違ったら「おはようございます」と言う
- 帰るときには「お先に失礼します」と伝える
これだけで「仲間」として認めてもらえる土台ができます。
感情的にならずにやりとりできるか
ASDの特性として、
- 相手の意図をうまく汲み取れない
- 急な変更にパニックになってしまう などがあります。
これ自体は悪いことではありません。
でも、職場で大切なのは「相手にどう伝わるか」です。
- 相手の言い方がきつくて、反発したくなった
- 理不尽だと感じて、感情が爆発しそうになった
こういう時こそ
- 一呼吸おいてから話す
- 一度紙に書いて整理する
- 相談員・上司に冷静に伝える など
対処ができるようになることが必要です。
これは「訓練」が必要です。
そして、就労移行の場はその訓練ができる「貴重な期間」です。
最後に:あなたのピラミッド、誰と育てますか?
「職業準備性ピラミッド」は、見た目はただの図です。
でも、この図は『あなたの人生の地図』になります。
- 何が得意か?
- 何が弱点か?
- どこに支援(配慮)が必要か?
- すでに、自分で乗り越えられている部分はあるか?
これをあなた自身が把握することが、
自己理解の第一歩です。
そして、これを就労支援の職員や信頼できる人と共有していくことが、
「支援される力」=「自己開示力」になります。
- 健康管理ができていない
- 日常生活が回っていない
- 対人トラブルを起こしがち
どれだけ役に立つスキル・資格を持っていても、です。
だからこそ、焦らず、まずは土台から固めていくことが何よりも大切です。
この記事を読んでくださって、ありがとうございます。

自分なんて、まだダメだ…

ピラミッドの土台なんて、できてない…
そう思ったあなたへ。
それでも今こうして、
この文章を読んでくれたことが、あなたの第一歩です。

(管理人)
焦らなくていいし、
完璧じゃなくていいです。
私もまだまだ、道半ばです。
まずは「気づくこと」、そして「やってみること」
あなたのピラミッドは、これから育てていけます。
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