
「ASDなそら」管理人のそらです。
ASD(自閉スペクトラム症)当事者の視点で、
仕事・生活に役立つ情報を発信しています(^^)

仕事が、なんだかつらい。
でも、辞めるほどじゃない。
頑張れてしまうからこそ、
しんどさが積み重なっていく…
そんな思いを抱えながら働く私にとって、
田中慎弥さんの『孤独論』にある【仕事に意味なんか求めるな】という一言は、
衝撃でした。
- 正しく働きたい
- 他人の役に立ちたい
- 人の期待に応えたい
そのような気持ちが強く、無意識に自分をすり減らしてしまいます。
仕事に対して「こうあるべき」という思いが強いため、
できないことや思うように評価されないことがあると、
深く落ち込んでしまいます。
ですが彼は、本書の中で何度も「仕事を人生の中心にするな」と繰り返します。
これは、今まで私が聞いてきた「やりがい」「成長」という言葉とは真逆の視点でした。
「仕事に意味を求めすぎるな」
『孤独論』では、
「仕事に意味を見出さないことこそが、自由な生き方につながる」と語られます。
仕事は社会との接点としては必要かもしれませんが、
それが自分の価値そのものではありません。
ASD当事者として、私は他人との比較に弱いです。
- 自分はパートタイム社員。周りは正社員ばかり
- 変化の少ない仕事をしている
- 業務内容は、補助的な業務にとどまっている
これらのことにコンプレックスを抱くこともあります。

このままじゃ、いけないのでは…
そうやって、何度も自問してしまいます。
でも田中氏の言葉は、こう問いかけてきます。

(イメージ)
その問い自体、社会に刷り込まれた価値観ではないか?
確かに、仕事がすべてではありません。
にもかかわらず、私たちは「やりがいのある仕事をしなければいけない」
そんな前提で生きてしまっています。
それがどれほど自分を縛っていたかに、本書を通して気づかされました。
「働いているだけで偉い」
田中氏は、働くことに対して過度な理想を抱くことの危うさを指摘しています。
私たちASD当事者にとって、毎日職場に行き、
与えられた仕事をこなすだけでも、非常に大きなエネルギーを使っています。
- 人とのコミュニケーション
- 環境の変化
- 同時並行の作業
- 感覚過敏
それらに対処しながら「普通の顔」をして働いています。
そんな日々を送っているからこそ、こう言われたいのです。

働いているだけで、えらいよ

出勤しただけでも、今日はよく頑張ったね
むしろ、それこそが現実であるべきです。
世間がどう評価しようと、
自分がその労働を積み上げてきたことは事実であり、誇っていいのです。

(イメージ)
- 自分の労働を他人に理解されようとするな
- 誰にもわかってもらえない前提で生きろ
そんな彼の姿勢は、孤独なようでいて、
実はとても温かい励ましに思えました。
「無理するな、でも働き方はあきらめるな」
私自身、仕事に関して大きな壁にぶつかったことがあります。
頭痛や気分の落ち込みで出勤できなかったとき、
「やっぱり自分は社会不適合者ではないか」と考えてしまいました。
ですが、田中氏はこう語ります。

(イメージ)
社会が全員に適しているわけがない。
無理に合わせること自体が、無理なのだ。
この言葉に、救われました。
無理をすることでしか仕事を続けられないのなら、それはもう限界なのです。
むしろ、限界を感じた時点で方向転換を考えるべきですし、
それは敗北ではありません。
変化という勝利を、見出すことができたのです。
ASD当事者にとっては、
柔軟な働き方や、作業の段取りが明確な仕事環境が非常に重要になります。
それを「わがまま」や「甘え」ととらえるのではなく、
必要な環境として認識することが、これからの社会には求められています。

「孤独な仕事」
私は日々、官能検査や書類処理といった、地味な業務を行っています。
一見すると創造性も裁量もないように思えるかもしれません。
ですが、それらは私にとって【ひとりで集中できる貴重な時間】であり、
自分の安定を支えてくれています。

(イメージ)
孤独な労働は、自分自身と向き合う時間だ
彼はそう語っています。
これはASDの人間にとって、非常に意味のある表現です。
誰とも話さず、ルーチンワークに没頭する時間こそが、
心を落ち着け、自己肯定感を保ってくれます。
他人からは理解されにくいかもしれません。
ですがそれでいいのです。
自分にとって必要な働き方、自分に合った仕事スタイルを大切にしていけば、
それはやがて自分の強みとなります。

孤独を恐れない。その姿勢は優しさでもある
『孤独論』の中で語られる孤独は、「誰とも関わらないこと」ではありません。
「自分の軸を他人に明け渡さない」という姿勢であり、
それは他人を拒絶することとは違います。

孤独を恐れない人間は、他人にも無理に踏み込まないのです。
だからこそ、他人に対して優しくなれるのだと思います。
仕事の場でも同じです。
無理にチームに溶け込もうとせず、自分の距離感を守りながら働く。
それでいいのです。
むしろ、そういう姿勢のほうが長く働き続けられると思うのです。

おわりに:「意味」に縛られずに働こう
田中慎弥『孤独論』は、ASD当事者にとって
「働き方の見直し」「自分との向き合い方」に新たなヒントをくれる一冊でした。
仕事は人生の中心ではない
意味を求めすぎるな
孤独でいい
この3つの言葉が、私の中でずっと残っています。
今、働くことにしんどさを感じている人、特にASDなどの特性を持ち、
「正解のない社会」で生きづらさを感じている人にこそ、この本を読んでほしいです。
そして、「自分なりの働き方」を見つけていってほしいと思います。
孤独を恐れず、自分のリズムで、静かに、誠実に働く。
それが、誰にも真似できない強さになるのです。
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